間質性膀胱炎の患者さんが日常生活で注意することをまとめました。
とくに間質性膀胱炎の患者さんの

約90%が特定の飲食物を摂取したあとに症状が悪化すること1)
が知られています。

1) Friedlander JI. Diet and its role in interstitial cystitis/bladder pain syndrome (IC/BPS) and comorbid conditions.  BJU Int. 2012 Jun;109: 1584-91.

特別に難しいことはなく、誰でもいつでも安全に実施でき、副作用もないので間質性膀胱炎と診断されたらトライしてはいかがでしょうか。

まずは原理・原則です。

1)間質性膀胱炎には膀胱鏡で膀胱内にハンナ病変がある「ハンナ型間質性膀胱炎(HIC)」とそれを認めない「膀胱痛症候群(BPS)」の2種類があります。
2)HICとBPSは「症状は似ているけれどまったく異なる病態(病気)」です。
3)だからHICとBPSの治療戦略は異なりますが、食事療法を含めた生活上の注意点は「共通」しています。
4)なお、食事療法はすべての間質性膀胱炎患者さんに共通した絶対的なものではなく、個人差が非常に大きいので、ここで取り上げたすべての食品が食べられないわけではありません。

それでは本題です。

1.IC/BPSの患者さんへの生活上のアドバイス

チェックリスト

□ 自分の病気を正確に理解すること。
  つまり、自分はHICなのかBPSなのか?それともまだ病型分類ができていないのか?
  → 理解していなければ主治医にしっかり確認しましょう。
□ IC/BPSは慢性疾患であることを理解すること。
  治療には時間がかかります。
  「薬が全然効かない」「なかなか良くならない」「手術したのに再発した」
  など辛いことや焦る気持ちがあると思いますが長期戦です。
  新しい薬や病態の解明が進んでいます。時間がかかっても必ず良い方向へ向かいます。
□ 濃いおしっこは膀胱に対する刺激が強いので症状を悪化させます。
  極端な水分制限は止めましょう。
  頻尿になることが心配かもしれませんが、尿を薄くしたほうが痛みは和らぎ
  ます。
□ 便秘は大敵です。症状を悪化させるのでお腹の調子を整えて下さい。
□ 約90%のIC/BPSの患者さんがある特定の食品で症状が悪化します。
  自分に合わない食べ物や飲み物を見つけましょう。(後述)
□ ストレスが症状を悪化させます。
  家族や親しい人にもIC/BPSのことを知ってもらいましょう。
□ 重症のHICは国が認めた「指定難病」です。国から支援を受けることができます。条件を満たしているか、申請が可能か主治医に相談してみましょう。
  (Bosch PC. Interstitial cystitis/bladder pain syndrome advice  checklist Urology 2014,84:321-6を改変して作成)

2.食事療法について

個人差が大きいことを知っておきましょう!

食事療法はとても重要です。
ただし個人差が大きいことが特徴です。
本やネット(この記事も含みます)に書いてあるすべての食べ物や飲み物がIC/BPSの患者さんにとってNGだというわけではありません。
「あれもダメ」「これも食べられない」「何も食べるものが無い」とストレスをため込むことも症状悪化につながる可能性があるので注意してください。

1)なぜ食事療法が重要なのか?
くり返しになりますがIC/BPSの患者さんの90%近くが、ある飲食物の摂取後に症状の悪化を認めていると報告されています。
食事療法に関してはHICの患者さんもBPSの患者さんも効果に差が無かったという報告もあり、間質性膀胱炎と診断された患者さんがまず最初に取り掛かる治療法だとも言われています。

2)どんな食べ物が悪いのか?
柑橘系の食べ物(グレープフルーツやオレンジなど)で症状が悪化する人が多いと言われています。
自分に合わない(食べたり飲んだりすると症状が悪化する)食べ物を見つけていくことが大切です。

参考資料
症状悪化と関係があると考えられる食品リスト

注意!以下のリストの食品がすべて悪いのではありません。あくまでも候補となる食品例です。

・アルコール、コーヒーや紅茶、炭酸飲料
・クランベリージュース、グレープフルーツ(ジュース)、レモン、オレンジ(ジュース)、パイナップル(ジュース)、いちご
・チリペッパー、ピクルス、トマト(製品)
・サラミやソーセージなどの加工肉、大豆製品
・ヨーグルト
・ワサビ、ケチャップ、ドレッシング、醤油、酢、ソース
・チョコレート
・インド料理、メキシコ料理、タイ料理、ピザ、辛い食べ物
・人工甘味料
・グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料)

Interstitial Cystitis Association(ICA)のリスト等を参考に作成

3)具体的にどうすればいいのか?
① 症状に波がある場合は、
悪くなった時に「何を食べたのか?」「何を飲んだのか?」を確認すること。
メモなどに記録しておくといいでしょう。
※なお食べたり飲んだりしたものの影響が出るまでの時間は、数分後から4時間後ぐらいまでと言われています。

② エリミネーションダイエット(Elimination Diet)
いわゆる「除去食療法」のこと。
「膀胱にやさしい食品」つまり上記リスト以外の食事だけでしばらく生活し、その後から制限していた食品を1品目ずつ再導入する方法。
ただし栄養のバランスを考える必要があるので、私は管理栄養士と相談しながら実施する必要があると考えています。

もう一度強調しますが、食事療法には個人差があります。
リストのすべての食べ物がNGではありません。
また「大好物」で症状が悪化する場合でも、どうしても食べたいときは食べてみて症状が悪化したら「やっぱりね。しかたないね。」ぐらいの軽い気持ちでいるほうがストレスをためずに済むのでいいのではないかと個人的には考えています。

(文責:医療法人 南里泌尿器科医院 院長 南里正晴)

2021年3月6日 初版作成
2021年3月7日 改訂2版