准看護師資格試験解説①

秘伝のオープン 
2021年泌尿器科授業①(准看護師を目指す学生さん)の練習問題とその解説(2021年6月20日改訂中です。)
→時間があるときに少しずつ書き直し中です。今年の授業が終わるまでには完成させるつもりです。

南里泌尿器科医院の院長は佐賀市医師会立看護専門学校(高等課程)1年Aクラスの腎・泌尿器科授業を担当しています。
授業はオリジナルプリントを使用しています。
授業中には資格試験の演習や解答・解説を行う時間がないのでホームページ上に公開しています。解答と解説は院長が行っているので間違えや分かりにくいところがあるかもしれません。質問は授業中にお願いします。
※なお、適宜追加修正しながら改定していきます。

1)腎臓は、後腹膜器官である。 
2)腎臓は、腹腔内にある。   ×

解説)
人体 p184 図8‐14、p211 参照
1)と2)は同じ内容を問う問題です。
腎臓は腹腔の後ろ側にある、後腹膜臓器であることを覚える。
尿管も後腹膜腔内に存在しています。
ちなみに、
腹膜後器官(後腹膜器官)について、誤っているものを一つ選べ。
1.十二指腸
2.膵臓
3.腎臓
4.膀胱

という問過去問にはあります。
答は4.膀胱 です。
膀胱は一部が腹膜に覆われているので半腹膜内臓器 と呼ばれるグループに属します。この手の問題は看護師国家試験にも出ています。

3)右腎のほうが左腎よりも高い位置にある。 ×
解説)
これも良く出る問題。
試験中に慌てなくていいように腎臓のイラストが描けるようになっているといい。右腎は肝臓で圧排されるから低い位置になります。

4)腎臓の実質は皮質と髄質からなる。 
5)腎盂で尿が生成される。      ×
6)腎盂(腎盤)は腎小体に富む。   ×
解説)
まず教科書p79の図1-1をよく見て下さい。
腎臓の実質とは、腎臓の機能をつかさどっている部分のことです。
つまり実際におしっこを作ったりしている部分のこと。腎臓は実質で尿が作られ、それが腎臓の内面(内側)にある腎盂へポタポタ入ってくるのです。
図1-1では腎臓の皮質に糸球体があり、髄質に集合管や近位尿細管などがあることに注目してください。
だから5)尿が生成されるのは腎実質であり、6)腎小体も実質の皮質にあるのです。

7)腎臓の中央付近のくぼみを腎門という。     
8)腎臓の外側の膨らんだ部分を腎門という。    ×
9)腎門には、腎静脈、腎動脈、尿管が出入りする。 
解説)
看護学入門 人体の仕組みと働き P212 図10‐2を見て下さい。
腎門部に腎動脈、腎静脈、リンパ管、神経、尿管が出入りしています。

10)腎臓はエリスロポエチンを産生する。      
11)腎臓はプロゲステロンを産生する。       ×
12)腎臓は血液の酸塩基平衡を維持する器官である。 
解説)
腎臓には内分泌臓器としての機能があることを覚えてください。
つまりホルモンを産生します。(成人看護p83)
エリスロポエチンは赤血球の産生を増加させるホルモンです。
だから腎臓が悪くなるとエリスロポエチンの産生も低下し貧血になります。
プロゲステロンとは女性ホルモンのことで腎臓とは関係しません。

酸塩基平衡とは、体内の酸性とアルカリ性のバランスを保つことです。
人間が活動すると有害な酸(水素イオン)それが血中に放出され肺と腎臓で処理され体外へ排出される。
だから腎臓が悪くなる(腎不全といいます)と体に酸が貯まる状態(アシドーシス)になってしまいます。

13)腎血流量は毎分心拍出量の約1/4~1/5である。    

14)腎臓では血液(血漿)が濾過され、原尿がつくられる。 
15)血液は糸球体で濾過される。             
16)糸球体は輸入細動脈と輸出細動脈が出入りする。    

11)腎血流量が減少すると、原尿の量が減少する。 
解説)
尿の原料は血液。とうぜん腎臓へ十分な血液が流れてこなければ尿の量も減ってしまいます。

12)腎小体は、腎臓の髄質に存在する。 ×
解説)
6)の解説参照。

14)腎小体と尿細管を合わせて、腎単位(ネフロン)という。 
解説)
絶対覚える公式
①腎小体=糸球体+ボウマン嚢
②ネフロン=腎小体+尿細管

15)ネフロンは糸球体とボウマン嚢(糸球体嚢)からなる。 ×
解説)
糸球体とボウマン嚢で腎小体。

16)腎単位(ネフロン)は、腎臓1つに約100個存在する。 ×
解説)
片方の腎臓に100万個あります。

17)腎小体で濾過された原尿は、尿細管へと流れていく。 
解説)
腎小体で濾過された原尿は1日に180Lでドラム缶1杯分。これが尿細管で再吸収(洗濯機の脱水みたい?)される。
99%の原尿が再吸収され、最終的に1日約1.5Lの尿が体外へ排泄される。

18)成人男性の1日の糸球体濾過量は約10Lである。 ×
解説)
糸球体濾過量とは原尿の量は?の意味です。180Lぐらいですね。

19)タンパク質は、糸球体で濾過される。 ×
解説)
ほとんどのタンパク質は糸球体で濾過されない。だから健康な状態では尿中にタンパク質は出てこない。

20)血液は尿管で濾過される。 ×
解説)
尿管とは腎臓でできた尿を膀胱へ運ぶ管のこと。
腎臓→腎盂→尿管→膀胱→尿道の順番は必ず覚える。
とくに尿管と尿道を間違わないように!

21)水は腎盂で再吸収される。 ×
解説)
再吸収されるのは尿細管や集合管です。

22)原尿に含まれる糖は、尿細管でほぼ100%再吸収される。 
解説)
だから通常は尿中に糖は出ません。

23)原尿中のアミノ酸のほとんどは、集合管で再吸収される。 ×
解説)
原尿は近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管で再吸収されます。
まずこの順番は必ず覚える。そして大切そうなものはだいたい近位尿細管で再吸収されます。
「アミノ酸」大切そうですね。近位尿細管で再吸収されます。

24)原尿の水分は、その99%以上が再吸収される。 
解説)
だから1日180Lぐらいの原尿が1日1.5Lぐらいの尿になってしまうのですね。

25)尿細管は遠位尿細管、ヘンレループ、近位尿細管を経て集合管となる。 ×
解説)
腎小体で濾過された原尿は、①近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管の順で再吸収されていくことは絶対に覚える。

26)原尿は尿細管で再吸収される。 

27)近位尿細管では、生体に必要な血液中の成分が再吸収される。 
解説)
標語:大切なものはたいてい近位尿細管で再吸収される。

28)抗利尿ホルモン(ADH)は、近位尿細管で水の再吸収に関わる。 ×
解説)
下垂体後葉で分泌される抗利尿ホルモンは遠位尿細管における水の透過性を亢進させます。

29)アルドステロンは副腎髄質ホルモンである。 ×
解説)
正しくは「副腎皮質ホルモン」です。

30)糖(グルコース)は遠位尿細管で吸収される。 ×
解説)
大切なものはたいてい近位尿細管で再吸収される、の標語です。

31)アミノ酸は近位尿細管で再吸収される。 
解説)大切なものはたいてい近位尿細管で再吸収される。

32)尿細管で再吸収される物質について、誤っているのはどれか。
 1.塩化物イオン(Cl)  再吸収される。
 2.ブドウ糖(グルコース)  再吸収される。
 3.クレアチニン × ほとんど再吸収されない。
 4.アミノ酸  再吸収される。

解説)
これはやや難しい問題です。
でも「大切なものはたいてい近位尿細管で再吸収される」の公式で対応できます。
クレアチニンとは筋肉でつくられたごみです。
クレアチニンは尿細管でほとんど再吸収されず尿中に排泄されるので、この筋肉のごみであるクレアチニンが血液中にたくさん残っているということは腎臓の働きが落ちて「ごみの処理ができなくなっている」ことを示唆するので腎機能検査に使用されます。

34)エリスロポエチンは、骨髄の白血球の生成に作用する。 ×
解説)
エリスロポエチンは赤血球の産生に作用します。

35)腎臓で産生されるレニンは、血圧を上昇させる働きがある。  

36)尿管の生理的狭窄部位は2ヵ所である。 ×
解説)
3カ所です。

37)尿道は、腎臓から膀胱につながっている。 ×

38)尿は、膀胱から尿管を通って体外に排出される。 × 

39)膀胱内の尿を体外に排出する器官は尿管である。 ×

解説)
37)~39)は類似問題ですね。
腎臓で作られた尿は、腎盂→尿管→膀胱→尿道の順番で体外へ排出される。
これも絶対に覚える。

40)女性の尿道は7~8㎝である。 ×

41)男性の尿道は女性に比して長い。 

解説)
40)、41)ここも重要。試験対策としては、尿道の長さは
男性18cmで女性3cmと覚えてください。理由は別のパートで解説します。

42)膀胱は腹膜後器官である。 ×

43)膀胱の内面は、移行上皮である。 

44)膀胱の上皮は単層扁平上皮である。 ×

解説)
膀胱の表面(上皮)についても時々出題されます。
移行上皮細胞は、腎盂や尿管、膀胱の表面を覆う粘膜上皮のことです。 膀胱の移行上皮細胞は尿が貯まった時には扁平に、空の状態では立方形 に“移行”することから移行上皮と呼ばれます。
ポイントは膀胱の上皮は移行上皮細胞であり、尿管も腎盂も移行上皮細胞であることです。

45)前立腺は、膀胱の下方に位置している。 

46)子宮は、膀胱と直腸の間にある。 

解説)
45)、46)などの問題を解くときには尿路系の絵が描けるようになっていれば楽勝です。

47)精巣は、体温と同じ温度に維持されている。 ×

解説)
精巣内の精子形成の適温は体温よりやや低いと言われています。だから陰嚢の皮膚には小じわが多く存在し陰嚢の表面積を温度によって変化させ、一種のラジエーターの役として精巣の温度調整を行っているのです。

48)精子は、精細管(曲精細管)でつくられる。 

解説)
まず精巣の働きは2つあることを知っておく。1つは精子をつくること。もう一つは男性ホルモンを産生すること。
精子は曲精細管でつくられ、男性ホルモン(テストステロン)は間質のライディッヒ細胞でつくられる。

49)精子形成は正常体温よりやや低い温度が適している。 

50)精巣はアドレナリンを分泌する。 ×
解説)
アドレナリンは副腎髄質で分泌されます。

51)精巣は、男性ホルモンの分泌と精子の産生という2つの機能をもつ。 

52)標準的な成人男性の体液は、体重のおよそ60%を占める。 

53)肥満者は、体重に占める体液の割合が高い。 ×

解説)
水(体液)は主に筋肉に含まれ,脂肪にはない。だから肥満者は、体重に占める体液の割合が低いことになる。
ちなみに、女性は男性と比べ体重に占める脂肪の割合が多いから、水分量は男性に比べ少ない。
子どもの水分量(体液の占める割合)は多く,老人は少ないことも知っておきましょう。

54)成人男性の1日の尿量は約1~1.5Lである。 

55)排尿反射の中枢は小脳にある。 ×
解説)
ここは難しい。排尿反射の中枢は延髄の橋(第1の中枢)と仙髄(第2の中枢)にあります。

以上です。
覚えるところが多いのですが、腎・泌尿器科疾患を学ぶ上での基本なのでしっかり理解しましょう。

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