当院で行っている専門的な治療②
前立腺がん治療におけるSpaceOARハイドロゲルスペーサー留置術について
当院では重粒子線治療を受ける患者さんでご希望がある場合は、重粒子線の直腸への影響を低減するために『SpaceOARハイドロゲルスペーサー留置術』を行っています。
1.ハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR)とは?
SpaceOARは、前立腺と直腸の間に安全に挿入する医療用ハイドロゲルで、放射線治療中の直腸への被ばくを大幅に軽減します。
治療終了後、体内で自然に吸収されます。

2.治療の目的は?
佐賀県では鳥栖市に九州国際重粒子線がん治療センター(通称:ハイマット)があるので前立腺がんの治療に重粒子線治療を希望する患者さんが多くいます。
もともと重粒子線治療は安全性が高く、治療後の直腸障害が少ないとされています。それでも一定頻度で直腸に対する有害事象は発生します。
そこで重粒子線治療を受ける前に前立腺と直腸の間にゲルを注入することで直腸と前立腺の間を1~1.5cmほど離すことで直腸への被ばくを軽減することが目的です。
3.当院での治療の流れ
重粒子線治療を予定されている患者さんでハイドロゲルスペーサー留置を希望された患者さんに実施しています。
実施前には九州国際重粒子線がん治療センター(ハイマット)の放射線科医師と協議しハイドロゲルスペーサー留置の適応や留置術の時期を決めています。
だいたい重粒子線治療の準備(固定具作成)の2~4週間前に実施しています。
1泊2日(水曜日午前中に入院し、午後からスペーサーを留置します。経過観察を行い翌日の木曜日午前退院としています)で実施しています。
4.当院におけるハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR)の特徴
1)全例を院長が実施しています。
2)九州国際重粒子線がん治療センターの放射線科医師と密に連絡を取りながら治療計画を行い施行することで安全な治療を目指しています。
3)ハイドロゲルスペーサー留置時には同時に金マーカーも留置することで重粒子線治療の治療計画が行いやすくなるようにしています。
4)安全な留置を目指しているため治療中にハイドロゲルスペーサー留置に適さないと判断した場合はゲル注入を中止することもあります。